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2005.05.27

思いを共有する空間

「スラムダンク あれから10日後」のドキュメンタリーがこのあいだ
フジテレビ系で放送されました。このイベントの事はSWITCH 2月号で特集
されていましたが、今回この番組を見て新たな発見と感動がありました。
(このイベントやSWITCH 2月号のことを書いた以前の記事はこちら

スラムダンクの作者、井上雄彦は去年こんなキャンペーンを行ないました。
「スラムダンク」単行本1億冊突破を記念した新聞6紙への個人名での
全面イラスト広告。それに続く4ヶ月間だけの感謝記念サイト。
そして廃校になった高校を3日間だけ借りて行なわれたファイナルイベント。
この番組はそのファイナルイベントを取材したものです。

SWITCH 2月号では、このイベントのメインであるスラムダンク最終話の
10日後を描いた黒板漫画のことが詳しく載っていました。
今回の放送ではイベントのそれ以外の内容も知ることができました。
それを見てまた感動したのです。

この番組を見終えて、私はこんなふうに感じました。
このイベントは3日間しか存在しない手作りのテーマパークだったのだなと。

井上雄彦はメインである23枚の黒板漫画を描き終わった後もイベント作りに
積極的に関わりました。机の配置、ポスターの位置など全てのものに
目を配ったそうです。トイレの案内の小さな黒板などにも直筆のメッセージや
イラストが描いてあったりして、校舎の至るところにそんな手作り感が
あふれています。漫画を描くのと同じように読者の目に触れるもの全てに
手間をかけるのだと、番組では言ってました。

自由にバスケができるようにと、体育館では更衣室やボールが用意されました。
面白いのは、シュートが決まるとセンサーで歓声が上がる仕掛けがあったそうで
これも嬉しい演出です。

その他にも、体育館の2階ではスラムダンクの名場面のスライドショーが
あったり、校舎の階段の踊り場では感謝記念サイトに書き込まれた8万の
メッセージが壁に次々と映し出されたり、ある教室では黒板漫画の
メイキング映像が上映されたりと、このイベントは黒板漫画を始めとして、
学校という空間の面白さ、それを巡る楽しさにあふれています。

私が感心したのは、井上雄彦はこの3日間のイベント中ずっといたにも
かかわらず、ほとんどファンの前に現れることはなかったということです。
自分がみんなの前に出れば、場の雰囲気が壊れるからという理由だそうです。
作者が現われればファンは嬉しいけど、それは違ったものになってしまう。
スラムダンクの世界を純粋に楽しんでもらおうという、本物のもてなしの心を
感じました。これがエンタテインメントの精神なんだと思います。
井上雄彦が現われたのは、閉館の1時間前くらいの夕方、イベントの
一参加者としてファンと一緒にバスケをやった時ぐらいだそうです。

この番組を見ている間ずっと感じてたのは、作り手と受け手の幸福な関係です。
作者はイベントのあいだ控え室で過ごしながら読者のことを考え、読者は
イベントを楽しみながら作者に思いを馳せる。そんな、思いを共有する空間が
そこにはありました。それは作者と読者の間だけではなく、そこを実際に訪れた
読者と読者の間にも存在していたように思えました。

あー、いいなあ、行きたかったなあ、と実際にイベントを見に行った人を
うらやましく思いましたが、この番組の最後に流れたのは、
そんな人にも配慮された井上雄彦のこんなメッセージでした。
「来てくれた全ての皆様。来たいと思ってくれた全ての皆様。ありがと」
じーーん。

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