カテゴリー「読書」の4件の記事

2007.06.17

「12歳からの映画ガイド」 佐藤忠男

学生時代、映画研究会に所属していました。
当時私には、映画に関する本で2つの愛読書がありました。

ひとつは「お楽しみはこれからだ」。映画の名セリフを集めた
和田誠の有名な本で、ご存知の方もいらっしゃるでしょう。
映画のロマンチックな面や、楽しさを教えてくれた名著です。
もうひとつは「映画の読みかた」。映画評論家の佐藤忠男が
書いたこれも名著です。※絶版になってるのが残念。
この本は映画の奥深さを教えてくれました。監督が映画に込める
想いを具体的に解説しており、まさに映画の読みかたを教えて
くれるものでした。私に「映画を見る眼」を与えてくれた本で、
今でもとても感謝しています。

さて、先日本屋を歩いていると一冊の本に目が止まりました。
それを手にしたとき、ちょっと動けなくなってしまいました。
感動したからです。その場で思わず買ってしまいました。
その本が「12歳からの映画ガイド」。佐藤忠男の本です。

1930年生まれの佐藤忠男は今年73歳。映画評論家として
確固たる地位も確立した今、好きな映画を見て、好きなことを
書いて悠々自適に暮らしたって、誰も文句は言わないでしょう。
なのに、この人は次の時代を担う子どもたちのために、
自分のできることを精一杯しようとしている。その志に
深く感銘してしまいました。

難しい漢字はルビを振りながら、子どもにもわかる易しい
言葉で、映画の素晴らしさを伝えようとしている。
そしてこの本のサブタイトルは「生き抜く力を学ぶ!」。
子どもたちの将来を思い、人として生きていくための
大切なことを、映画を通して伝えようとしている。

おじいちゃんが孫に語りかけるような優しさを感じます。
この本は映画評論家として生きた佐藤忠男にしか書けない、
次の世代に贈る素敵なプレゼントです。

黒澤明の「生きる」について、この本はこう書いています。

 人が本当に、生きていて良かったと思うのは、世のため
 人のために自分から進んでつくして、いいことができた、
 人々のために役に立てたと思えたときである。
 (中略)
 自分なりに、世のため人のために役に立ちたい、
(主人公の)渡辺勘治氏のようでありたいと思っている。

この本で佐藤忠男はそれを実践しようとしているのでしょう。
これがきっと佐藤忠男の「生きる」なのだと思います。
では、私にとっての「生きる」とはなんなのだろうか。
私にできることを、この本を手に取りながら考えています。

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2007.03.06

「あたりまえなことばかり」 池田晶子

このblogのキーワードのひとつに間違いなくあるのが、「考える」と
いうこと。あるものについて考えてみたり、自分なりに捉え直して
みることで、新しい発見をしたり、新しい価値が生まれたりすることは、
とても楽しいことです。

その楽しさを教えてくれたのが、先日亡くなった池田晶子著の
「あたりまえなことばかり」でした。どういった経緯で手に取ったか
もう忘れてしまいましたが、哲学書らしからぬ洒落た本の体裁。
パラパラとページをめくると易しい言葉で興味深いことが書かれて、
思わず引き込まれてしまいました。

実は以前にもこのblogでこの本の内容を引用したことがあります。
※2004年11月20日の記事「スタンド・バイ・ミー」参照。
「言葉は命である」という記述を引用したのですが、
今でもそれは私の心の真ん中に息づいています。

さて、ここでクエスチョン。3つの問いに答えてください。

「死ぬということはどういうことなのだろうか」
「宇宙の果てはどうなっているのだろうか」
「なぜ人を殺してはいけないのだろうか」

これらの問いに、あなたならどう答えますか?

佐世保小六女児同級生殺害事件が起きたとき、インタビューに
答えた先生は、こう言いました。「生徒たちに命の大切さを
教えなければいけない」と。このとき私が感じた違和感を、
今ならはっきりと指摘できます。先生、あなたはなぜ人を
殺してはいけないのか、答えることができますか?

池田晶子はこんなことを書いています。

>「生死」「宇宙」「善悪」等、完全に人間の本質としての
> 知識について、人は人に何かを「教える」ことなど
> できるのだろうか。

そして、こうも書いています。

> 自ら考えさせること。考えて納得させること。
> それ以外に善悪を教育することはできない。

そう、私が感じた違和感はこう言い換えれば解消します。
「生徒たちと一緒に命の大切さを考えていかなければいけない」
これなら納得です。

さて、では3つの問いに答えてみましょう。
もし子どもから尋ねられたら、あなたはどう答えますか。
私ならこう答えます。

「そんな大事なことは人から教わるもんじゃない。自分で考えろ」

考えることの大切さを、池田晶子は何度も繰り返し書いています。

> 子供であれ大人であれ、人は不思議に目ざめることによって、
> 自ずから矩(のり)を知るのではなかろうか。無理に道徳や
> 哲学を教え、学ぶ必要もない。不可解な大宇宙に生き死ぬ
> 不思議、この感覚に目ざめるだけで、じつは十分なのでは
> なかろうか。この感覚は、ある意味で、畏怖する謙虚さの
> ようなものだからである。

「生死」「宇宙」「善悪」。考えても考えても分からない不思議。
科学をもってしてもすべての謎をいまだ解き明かすことは
できていません。その事実に気づいたときの驚き。
その気持ちを大事にしたいと思います。

「驚きを忘れるな」

この本に出てくるメッセージの中で、特に印象的なものです。
人は驚きを忘れたとき、おごりが生まれ、おそれを無くす。

知らないものを知りたいという欲求。知らなかったことを知った
ときの驚き。どうなってるのだろう。なぜだろう。そこから考えると
いう行為が始まります。それが人として生きるための出発点です。

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2005.08.19

「夕凪の街 桜の国」 こうの史代

ヒロシマをテーマにしたこのマンガは、いろんな
ところで紹介されているので、ご存知の方もきっと
いると思います。今、読み返してみて、やはり私も
この本について書きたいという気持ちを新たにしました。

私がこのマンガについて知ったのは「ダ・ヴィンチ」
1月号の「絶対はずさない!プラチナ本」というコーナーで
紹介されていたからです。「ダ・ヴィンチ」編集部員たちから
こんなふうな見出しで絶賛されていました。

「悲しみに溢れた人生 静謐で美しい人生」
「今も苦しむ人がいることを実感させてくれる静かな傑作」
「ヒロシマの暗部と光、今だからこそ描ける命の転生の物語」
「誰かを喪い、自分は生き残る。そうして今、われわれがある」
「この作品に出会えて本当によかった!」
「語らないことが持つ迫力」
「戦後世代が描き出す美しきヒロシマの物語」

これだけ勧めるのなら読んでみようという気になり、
本屋で探して見つけました。そして読んでみて納得しました。
確かに絶賛されている通りです。

このマンガのことをどんなふうに書けば良いのでしょう。
どんな言葉よりまずは手に取り、読んでみるのが一番です。
でも、それを承知の上であえて書いてみることにします。

わずか100ページ足らずの、この本には難しいことは
なにひとつ書いてません。易しい物語。そして優しい物語。
懐かしさを感じるほのぼのとしたタッチで親しみやすい絵。
時にユーモアを交えながら、微笑ましいその日常に
横たわる原爆の影を描いています。

原爆投下10年後の女性の淡い恋を描く「夕凪の街」
その女性の弟の子どもが主人公となる現代の物語「桜の国」

私たちの国で何が起きたのか、そしてそれは今でも終わって
いないことを、この物語たちは私たちに伝えようとしています。

できるだけ多くの人に読まれるべき物語だと思い、
ここに紹介しました。

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2004.07.30

「日めくり物語」

「日めくり物語 三十の人生の三十の感動」
著者:相田みつを(書)×川上健一(文)

小学館「ビッグコミック」で連載されてる「相田みつをの心の風景」が
単行本になりました。これは相田みつをの書と、川上健一の
掌編小説によるコラボレーション。ときどき読んでは気になってました。
毎回、相田みつをの書と、その書から連想して作り上げる川上健一の
掌編小説が載っています。単行本になったら、まとめて読みたいなと
思ってたので、すぐに買いに行きました。

ここでの川上健一の掌編小説がけっこう好きです。
ひとつが3ページほどの短い話で、何気ない日常の一コマを
描いてますが、それが泣かせるのです。ぜひ読んでみてください。
現実はこんなに善意に満ちてないかもしれないし、読んでて
照れくさく感じるかもしれない。でも人生を肯定するそのストーリーは、
人を愛する気持ちや感謝する心を、きっと思い出させてくれるでしょう。

まず相田みつをの書、次に川上健一の掌編小説を読む。
そしてもう一度相田みつをの書に戻って、その言葉を噛みしめる。
そうすることで、書も小説も、より深く味わえるような気がしました。

この単行本、タイトルが「日めくり物語」というだけあって、
「三十日間、三十の人生と三十の感動に出会えます」とのこと。
でも、買ったその日に一気に読んじゃいました・・。

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