カテゴリー「映画」の4件の記事

2004.12.22

「ハウル」・・私はこう見た2

「ハウルの動く城」を見て、この映画って「千と千尋の神隠し」に
似てるなと思いました。姉妹のような映画というのが私の印象です。
※以下、見た人を対象に書いています。

何が似てるのかと言えば、話の構成です。
物語には起承転結というものがあります。
物語の導入部にあたる「起」、そこから展開する「承」、結末に向けて
急展開する「転」、そして幕を閉じる「結」という構成です。
この2つの作品では、「起」がどちらも実にあっさりしてる。
千尋もソフィーもいきなり不思議な世界に放り込まれるわけですが、
その理由が希薄です。なぜそんな目にあわないといけないのか?

そして起承転結の「承」が延々と続きます。
「転」と「結」はおまけのような感じです。
え?こんな解決の仕方でいいの?という感じ。映画を見て、
物足りないと感じる人はこれが原因ではないでしょうか?

宮崎駿監督は何が描きたかったのか?それは延々と続く
「承」の部分だろうということが想像できます。
この2つの作品はどちらも「活力」をテーマにした物語です。
どこにでもいる普通の人が不思議な世界に放り込まれて、
そこで生きる力を見つけて輝き始める物語。

「千と千尋の神隠し」以前と以後では、宮崎駿監督の中で何かが
変わったような気がします。主人公のキャラクターの作り方が違います。
以前は主人公自身のキャラクターがとても魅力的でした。
でもこの2つの作品の主人公たちは魅力的とは言い難いものがあります。
どこにでもいる普通の人が環境の変化によって成長していく物語です。
キャラクターの魅力によってぐいぐい引っ張っていくタイプなら面白い
導入部が描けるのでしょうが、この2つの作品ではそれは無理です。
魅力的ではないキャラクターの導入部はばっさり切り捨てるのが良いの
かもしれません。本当に描きたいのはその後の「承」なのですから。

宮崎駿監督がなぜそんなタイプのキャラクターを主人公にしたのか?
理由は分かりませんが、以前の方法論が限界に来たのかもしれません。
「もののけ姫」でその方法論が破綻したような気が私はします。
あの映画ではサンよりもアシタカのほうがキャラクターとしては魅力的でした。
異世界に放り込まれた普通の人間という意味では、サンは千尋やソフィーの
原型なのかもしれません。にもかかわらず以前の方法論で展開したため、
アシタカに比重が移ってしまい、主人公のサンに感情移入しにくい映画に
なってしまったのではないかと感じました。

魅力的なキャラクターが紡ぐ物語より、普通の人の物語を描きたい。
宮崎駿監督はそう考えているように思えます。
現代を生きる人に向けた映画が「千と千尋」と「ハウル」なのでしょう。

「ハウル」を見て私はこう考えました。
ソフィーは呪いをかけられて90歳の老婆になった訳ではない。
90歳の老婆になったという強力な暗示をかけられただけではないか?
ただ、その暗示は肉体的な見た目の変化をもたらすほど強いものだったと。

そして、呪いは解けたのかという疑問。私は呪いは掛かったままだと
思ってます。呪いは掛かったままだけど、それを克服したというのが、
あのエンディングなのだと解釈しています。だからその後のソフィーの
ことを考えれば、気持ちが後ろ向きになったりしたとき、ふっと老婆に戻る
こともあるでしょう。でもソフィーとハウルの2人ならきっと大丈夫。
「ハウルの動く城」とはそんな映画だったのかなと思います。

描きたかったのは「承」の部分だったから、「転」や「結」の部分は
物語を終わらせるためのおまけのようなものだったのでしょうか。
だからあんなにあっさりしてたのだと思います。

この映画を見終わって読み取れるのはまず老いの問題。
気持ちの持ち方で若く生きることができるのだというメッセージを感じます。

そして呪いは掛かったままだと解釈した場合、心に不安を抱えるあらゆる
人たちに生きる希望を与えてくれます。例えば治らない病気と闘っている
人たちにとっては、この映画は特別な意味を持つかもしれません。
気持ちの持ち方で生き方は変わってきます。
この映画はそのことを伝えたかったのではないでしょうか?

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「ハウル」・・私はこう見た

「ハウルの動く城」を見ました。

感想を一言で書くなら「心の呪縛を解き放つ物語」。
わくわくしながら見ることができました。

この映画については分かりにくいとか物足りないとか、そんな感想を
よく目にします。人によって感じ方はそれぞれなのでどんな感想を
もっても間違いではありません。ただ、こんなふうな見方もあるんだなと
思ってくれたら、嬉しいです。※以下、見た人を対象に書いています。

分かりにくいというこの「ハウル」ですが、最大の謎は主人公のソフィーが
呪いによって90歳の老婆にされてしまったはずなのに、話の途中で
ときどき姿が若返ってるように見える点だと思います。恥ずかしながら
途中まで気がつきませんでした。ソフィーが寝ているシーンでは
まるで18歳の少女に戻ったように見えます。あれ?どうして?と
思いながら見ていました。でもよく見ると他のシーンでも同じような
現象が起きてます。ここに注目するとこの映画は俄然面白くなります。

若返る現象には共通点があります。どんな時に若返っているのか?
それは例えば、何か事件が起こっている時。他にも、前向きに
考えている時だったり、寝てる時や、そして恋をしてる時も・・。
これらに共通するのは何だろう?

私はこんなふうに考えました。
ソフィーは呪いをかけられて90歳の老婆になった訳ではない。
90歳の老婆になったという強力な暗示をかけられただけではないか?
ただ、その暗示は肉体的な見た目の変化をもたらすほど強いものだったと。

寝ている無意識の時に元の姿に戻るのはそういう理由だと考えました。
同様に、何か事件が起こっている時は、強力な暗示を忘れるほど事件に
集中しているから、背筋が伸びてしゃんと立てるのかもしれない。
前向きな考えは老いを退けるだろうし、恋をすれば気持ちが若くなる。
つまりソフィーの見た目の変化は、そのまま心のバロメーターなのです。

映画の持つ最大の魅力は「動き」です。
「動き」に魅力のない映画は、ある意味つまらない作品だと言えます。
そういう意味では、心の変化をこれだけ視覚化した作品は
それだけでもう十分楽しい映画です。ころころ変わるその姿に、
その「動き」に単純にわくわくさせられました。
「ハウルの動く城」・・私はこんなふうに楽しみました。

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2004.08.22

映画 「父と暮せば」

「父と暮せば」
監督:黒木和雄
出演:宮沢りえ、原田芳雄、浅野忠信


もう少し、あともう少しこのまま見ていたい。そう思った映画でした。
ここには私たちが失くしたものが溢れています。
それは例えば、まなざしの優しさです。

この「父と暮せば」は、黒木和雄監督の戦争レクイエム三部作の
完結編になるのだそうです。一作目は長崎の原爆投下までの
市井の人々の24時間を描いた「TOMORROW/明日」。
二作目は監督自身の戦争体験をもとに作った「美しい夏キリシマ」。
そして三作目の「父と暮せば」は、広島の原爆投下から3年後が
舞台になっています。

「TOMORROW/明日」で深く感銘を受けたので、この映画はぜひ見たいと
思ってました。原作は井上ひさし。出演は宮沢りえ、原田芳雄、浅野忠信。
ここまで役者が揃えば、これはもう見るしかありません。

広島の原爆投下から3年後の夏。美津江(宮沢りえ)は一人で暮している。
原爆で自分だけが生き残ったことに負い目を感じる美津江は、ある日、
青年(浅野忠信)と出会い、お互い惹かれ合うが、美津江は幸せになること
を頑なに拒んでしまう。そこに原爆で亡くなった父(原田芳雄)が突然現れる。
自らを「恋の応援団長」と名乗り、なだめ、すかし、励まし、なんとか娘に
幸せになってもらおうとするのだが・・。

この映画は基本的に二人芝居です。浅野忠信も少し出てくるけど、
ほとんど宮沢りえと原田芳雄の2人のみ。この2人がすごく良い。
宮沢りえは「たそがれ清兵衛」で見て、ものすごく好感を持ちました。
この「父と暮せば」もそうですが、女性的な情感あふれる演技です。
いつのまにこんな役者さんになったのでしょうか。
そして原田芳雄も素晴らしい。この「おとったん」は最高です。
広島弁の父娘の会話が生き生きとしています。何気ない仕草や
言葉に細やかな情感が漂って、それが見る者を嬉しくさせます。

二人芝居とはいえ、この父は娘が生み出した幻だということが、映画を
観はじめてすぐに分かります。つまりこの映画の本質は一人芝居といえます。
幸せになりたいという自分でも気づかない思いが、父という姿を借りて
現れたわけです。幸せになってはいけないという意識、幸せになりたいと
願う本心、その葛藤の物語です。

「うちはしあわせになってはいけんのじゃ」
頑なに幸せを拒む娘。広島に原爆が投下された日、娘は何を体験したのか?
次第に明らかにされていきます。友を失い、父を失い、自分だけが生き残る
後ろめたさ。この映画を見て感じるのは、なぜ罪もない人たちがこんなに
苦しまなくてはいけないのか?ということでした。戦争が否応なくすべての
人の心に影を落とす悲劇。どうしてこんなことが起こるのか?時に激しく、
時に静かに、この映画は語りかけてくれます。

原田芳雄と宮沢りえが演じる、親子が死に別れる再現シーンは
映画史に残る傑作です。2人が語り始めると、原爆が投下された直後の、
あの「ヒロシマ」が見えたような気がしました。回想シーンで話を進めるのが
映画のセオリーですが、あえてそれをやりません。舞台劇そのままに、
2人の演技で再現していきます。娘を思う父親の気持ちが、原田芳雄の
真っ直ぐに突き出されたこぶしに象徴されていて、胸に迫りました。
過去も未来も変わらぬ愛情が、そこにはあります。

父に励まされ、悲しみを乗り越え、未来に目を向けるまでの4日間の物語。
ぜひ劇場に足を運んで見てください。それだけの価値はあります。

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2004.05.17

映画 「ビッグ・フィッシュ」

ビッグ・フィッシュ
監督:ティム・バートン
出演:ユアン・マクレガー、アルバート・フィニー、ビリー・クラダップ


泣きました。でも悲しくはありません。見終わった後、
こんなに爽やかで優しい気持ちになれる映画なんて
そうはないのかもしれません・・。

主人公ウィルとその父エドワードの親子の物語。
おとぎ話のような荒唐無稽な体験談ばかり語る父エドワードは
みんなの人気者。でも主人公のウィルは、父が何ひとつ真実を
語ってくれないと、わだかまりを持っています。
ウィルの結婚があり、我が子の誕生を控えたある日、
患ってた父の容態が悪化したと連絡があり、ウィルは
父のいる故郷へ向かいます。父と子は分かりあえるのか?

大きな魚を釣りあげる話、未来を映すガラスの目を持つ魔女の話、
一緒に旅した巨人の話などなど、父エドワードが語る話はどれも
魅力的で、街の住人だけでなく、観客の心まで捉えてしまいます。
監督はティム・バートン。「シザーハンズ」などが好きだった人には
おすすめです。今回も素敵なファンタジーを見せてくれます。

父の最期の前に、ウィルは父を理解してあげることができるのか?
ウィル自身ももうすぐ父親になるわけで、自分の父親を理解しない
まま、生まれてくる我が子に対面したくはなかったことでしょう。
父エドワードの惜しみない愛情と信頼を、感じ取ることができる
なら、きっと奇跡は起きるはず。
未来を見たというエドワードは、ウィルにこう言います。
「めったにない死に方をする。それだけは言える」
それは何を意味するのか?心に沁みる物語です。

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